はじめに
本稿では、
- ブロックチェーンのプラットフォームの1つである「NEM」
- 2020年末にローンチ予定のNEM2.0ともいえる後継「Symbol」
両者の本質的価値を問います。
数あるブロックチェーン技術の中、NEM・Symbolに期待したい理由でもあります。
そしてそれは、
夢でも希望でもなく、非常に単純明快な「お金」にまつわる話です。
ブロックチェーン技術の目指す世界
まずは、夢と希望の話をしましょう。
ブロックチェーン技術は死んでいない
サトシ・ナカモトにより生を受けたブロックチェーン技術は発展途上です。
単に「暗号通貨」の2017年前後の乱高下のイメージにより投機的なチューリップバブルのような現象と捉えている方も多いと思います。
実際のところは、2017年の波を越え、「暗号通貨」の冬を経験しながらも、ブロックチェーン技術・ソリューションは成熟・洗練し続けています。
- トランザクション処理数を増加させる数々の試み
- プライバシー考慮としての取引隠蔽化の研究
- より公平なコンセンサスアルゴリズムへの志向
- 分散型金融DeFiの興隆
- 非金融分野で重宝するアセット/メタデータの拡充
などなど、数えきれないほどの進化を遂げています。
といっても、ブロックチェーンかじらないと何のことかわからないですよね。
ブロックチェーン技術は、企業・サービスのシステムに、ようやく受け入れられて取り込まれる段階にきたのが実状です。
ブロックチェーン技術を採用したシステム・サービスが実り、その恩恵を刈り取る時代は、まさにこれからこようとしているのです。
様々な業態の業務システムやサービスに、さらなる効率化や利便性をもたらす技術要素として、ブロックチェーン技術は活用されていく事が期待されています。
ブロックチェーン技術採用の課題
といいながら、ブロックチェーン技術の採用例は、ブロックチェーン技術を取り扱うニュースサイトなどにアンテナを立てていないと耳に入ってこないのが現状です。
なぜ導入が広まらないのでしょうか?
ケース1:何ができるかわからない・必要性を感じない
2016年、イーサリアムをかつぐ企業が、日本のSIに売り込みに攻勢をかけました。
セールスエンジニアとして提案・プレゼンの毎日を重ねていた私も漏れず、イーサリアムベースのソリューション案を検討する分科会に参加要請されました。
このころブロックチェーン懐疑派が主流であり、基礎技術を勉強もしない営業と、片手間参加の技術者の中、ネガティブな会議が進行します。
- ブロックチェーンは検索性に弱い。
データ管理はRDBMSやNoSQLなどの技術で充足する。
むしろ、それらの代替にならない。 - 企業システムを構築するのにチェーンに刻む事が逆に企業情報の流出に繋がる。
- パブリックチェーンにシステム構築・運用者としての旨味を見出せない。
忘れられない言葉があります。
ブロックチェーンって結局バズワードだよね!
具体的なソリューションへ結実することなく、一次ブームは去ったのです。
ケース2:作れる人がいない
イーサリアムは、solidityという独自言語を用いてスマートコントラクトを行います。
Java、JavaScript、TypeScriptが主流であった当時の勤め先で、solidityを扱うことができるエンジニアはいませんでした。
当然学習すればいいのですが、JavaScriptライクな言語とはいえ、学習曲線というものが立ちはだかります。
何に役立つかわからない、将来性があるかわからないブロックチェーン技術専用の言語を学ぼうとしたものは、残念ながらいませんでした。
ケース3:金がかかる
システムを構築するには、それなりのヒューマンリソースが必要です。
極論的には、天才数人のほうが、構築効率は劇的に良いそうですが・・・
天才はなかなか転がっているわけでないのです
となると、新たな言語を、それなりの人数に教え込むコストがかかります。
年単位または四半期単位で、結果を求められる営利企業にとって、研究開発費・人材育成・教育費は、具体的な費用回収の絵が描けないと、会社から拠出させるのは難しかったりします。
ブロックチェーンを用いたPoC案件などで、オンジョブトレーニングで人材が育てられるのがベストですが、そのようなPoC案件が続くことが約束されていません。
ブロックチェーン技術の発展に不可欠なもの
前項の課題を受けて、企業やサービスシステムにブロックチェーンを導入検討するために不可欠なものを逆説的に考えてみましょう。
何ができるか明確・採用が不可欠または他技術よりベター
ユースケースが明らかであること
ブロックチェーンっておいしいの?レベルの人が決裁するのが現状です。
ブロックチェーンの活用する定型的なユースケースが示されていることが重要です。
導入事例が示されていること
導入事例は安心です。
誰もがファーストペンギンになれるわけではないのです。
ブロックチェーンで実現したほうが容易であること
他技術で代替可能であれば、または容易であるなら、使う必要はありません。
作れる人が多い
既存の知識が活用できること
新たな知識を吸収するのはエンジニアとして必要なスキルではありますが、既存知識が活用できないと、学習への着手に導くのは難しいでしょう?
みな一歩一歩成長してきたのですから。
学習難度が低いこと
手につけたら高等数学や難度の高いアルゴリズムが必要だと人を選びます。
AI開発とか大好きな人だけがエンジニアしているわけでないです。
むしろ単なるツール・SaaSとして利用できること
むしろ今まで培った知識の延長でツールやサービスを利用しているがごとく、ブロックチェーンの旨味だけを利用したいのです。
金がかからない
参入コストが低いこと
コンサルをつけて人材教育したり、または研究開発で長い時間かけてとか、今のビジネススピードにあっていません。
コストはいかに安く、納期も求められています。
廃棄コストが低いこと
もし導入失敗した後のリスクヘッジも欲しいのです。
後から中央集権システムに置き換える事も可能という言い訳は必要です。
運用コストが低いこと
導入後に開発時の優秀なリソースを運用チームとしてはりつかせるほど、人材は潤沢ではありません。
育ったメンバーは新規プロジェクトに投入し、運用プロジェクトで人材教育をという必勝パターンを描けるかも、採用技術の選定には重要です。
NEM・Symbolの本質的な価値
ここまで読んだ方は、何を言いたいかはお判りでしょう。
私にとってのNEM・Symbolの本質的な価値とは、数あるブロックチェーンの中で
最もツール・サービス化された開発プラットフォームである
という開発容易性にほかなりません。
既存リソース(知識・人材・環境)をそのまま利用可能な開発プラットフォーム
と言い換えることもできます。
更に極言するのなら
素人でもブロックチェーンができちゃうプラットフォーム
という表現もできてしまいます。
転じると
ブロックチェーンアプリ・サービスが今すぐに大量生産できる
この点が、NEM・Symbolの本質的な価値だと考えています。
なぜ、そのような事が言えるのかをひも解いていきましょう。
何ができるのか
NEM・Symbolは、何ができるのか?という点が非常にわかりやすい基盤です。
イーサリアムのように汎用性が物凄く高い代わりに、サービスレイヤーを含めて構築しなければならないプラットフォームとは異なり
NEM・Symbolプラットフォームとして
ブロックチェーン技術の旨味が、機能としてバンドルされて提供されています。
つまり
ビルドイン機能が必要十分に提供されているのです。
具体的に紹介していきましょう
ユースケース
以下、Symbolの解説を読むとユースケースが把握できます。
簡単にまとめると…
- 独自トークン(通貨・ポイント・アセット)の作成・送信・その記録
簡易ポイントシステムは容易に構築可能
トレーサビリティが容易に構築可能 - アカウント・トークン別のアクセス制限
例えばランク別にアセットへのアクセスを制御可能
更には個別・固有のトークン所有権に基づく制御が可能
(あるモノの所有者だけが権利行使できるサービスが可能)
固有アカウント・トークン保持IoTに限ったアクセス制御 - ネームスペースの作成・リンクが容易
アカウント/トークンのエイリアス(別名)が設定可能
しかも脱着可能
つまりアカウント/トークンを人に識別可能な名称で提供可能
還元するとWebサービス利用のITリテラシを持つユーザで利用可能 - アカウント・トークン・ネームスペースへのメタデータ付与
トークンを数値だけでなくメタデータとの紐づきで管理可能
つまり、簡易取引メッセージの格納
チェーン外のファイルへのリンク
更にはメタデータにバイナリでデータ保管
非金融分野への応用が容易に - トランザクションへのメッセージ付与
メタデータ使わずにも取引時の簡易メッセージ可能 - 異なるトークン(チェーン)のアトミック(不可分)な交換
取引所を介さずにトークンの交換が可能
例えばコミュニティやゲーム内ポイント・通貨を
別サービスのトークンに変換し利用が可能。
コミュニティで稼いだポイントを変換し、別サービスで利用
ゲームで稼いだゲーム内通貨を、別ゲームの通貨に交換 - 複数トランザクションをバインドしたアトミック(不可分)な更新
エスクロー取引
トランザクション手数料のサービスによる代理支払い(手数料隠蔽化) - マルチシグかつ階層認証
エスクロー取引
階層構造(3階層まで)をもつ電子認証
導入事例
それでは実際にどのようなサービス・システムに使われているかの実例です
CBDC(中央銀行デジタル通貨)・コレクションコインの導入事例
リトアニアでコレクションコインのCBDCをNEMで導入している事例です。
トレーサビリティの導入事例
一つ目は中国のワインのトレーサビリティの事例
二つ目は大麻のトレーサビリティの事例
所有権の認証
1つ目は、マレーシア省庁の学位認証の事例
2つ目は美術品の所有証明の事例
電子投票
ウクライナの電子投票の試行の事例
IoT制御
ドローン配達のためのドローン(IoT)制御の事例
ポイントシステム
政策を通した政治家と市民のコミュニティで、政策推進にポイントを活用した事例
投げ銭
SNSにNEMプラットフォームの通貨XEMによる投げ銭をミックスしたサービス
などなど、世界中に事例が豊富にあることがNEM・Symbolの安心感です。
カタールワールドカップのホテル建設プロジェクトなどでも使われているそうですよ。
開発容易性
これらの技術が従来のシステム構築手法で構築可能でしょうか?
非改ざん性を求められるサービスは構築はブロックチェーンの独壇場です。
閉じた世界のポイントサービスは中央集権システムで構築可能ですが、そのポイントの生成から行使の非改ざん性が求められるケースではブロックチェーンでの実現が容易です。
つまりは電子選挙や二重投票を許さないアンケートや、中央集権システムが存在しない価値交換が必要なシステム構築では、ブロックチェーンの非改ざん性と、異チェーン間のアトミック(不可分)な交換が有効です。
トレーサビリティは管理するアセットの量によるでしょう。
大量の物を、大人数の参加者が利用し、しかも越境するようなトレーサビリティでは、トランザクション量が膨大となり、中央集権システムでは賄えないかもしれません。
IoT制御はどうでしょうか?
接続する大量のIoTからの大量データの非改ざん性を、中央集権システムで担保するのは限界がくるでしょう。
このように従来手法よりブロックチェーンの旨味が得られるシーンにおいて、プラットフォームが予め用意されている、十分にテストされたセキュアな機能を使うだけで、容易に組み込めるとなると、更に導入がしやすいのではないでしょうか?
NEM・Symbolで容易に実現できます
作れる人が多い
NEM・Symbolでブロックチェーンの恩恵が得られるといっても、それを作れる人がいなければなりません。そろうのか?っていうのは非常に大きな選定理由になります。
既存の知識が使えること
NEM・Symbolは、Webシステム構築における既存知識がフル活用できます。
先に説明したビルドイン機能が、REST-APIを通して活用可能となっています。
通常のWebサービスの組み込み感覚でビルドイン機能が扱えるのです。
もちろんCLI(コマンドラインインターフェース)ベースの利用も可能です。
サーバーサイドの構築では、こちらのほうが違和感なく実装できるかもしれません。
学習難度が低いこと
NEM・Symbolでは特殊な言語を覚える必要はありません。
REST-API、CLIを通しての実装が可能なので今までの言語で実装すればいいでしょう。
Webサービスや、CLIのコマンドを利用する際の約束事などは覚える必要はあります。
それはいつもの開発同じでしょう?
SDKが充実していること
更に、SDKが充実しているのも魅力的です。
JavaScript/TypeScript、JavaのSDKが公開されています。
APIさえ意識せず、これまで利用している言語のライブラリとして利用可能です。
このように、JavaやJavaScript/TypeScript、Webシステム構築の経験で難なくブロックチェーンアプリが構築できるとなると、現在のサービスの開発・運用者でも導入できそうですよね?
NEM・Symbolは人を選びません
金がかからない
参入コストが低いこと
前項の通り、ビルドイン機能・REST-API・CLI・SDKのコンボによって、
従来の開発リソースにて、NEM・Symbolの開発が可能です。
ブロックチェーン開発コンサルタントなどを呼ぶ必要もありません。
開発前の教育コストも非常に節約できるでしょう。
まず試してみようと試せる参入障壁の低さがNEM・Symbolの長所です
廃棄コストが低いこと
APIやSDKベースで構築した場合、それらのIFをエミュレーションすればNEM・Symbolの利用をやめることもできるでしょう。
それ以外の業務プログラムは既存の言語で構築したのですから、すべてを捨て去るのではなく、従来の中央集権システムでの構築に舵を切りなおすことも可能です。
廃棄コストが低く、コンテプランが立てやすいのがNEM・Symbolの長所です
運用コストが低いこと
開発時の教育コストの低さが、運用コストにも活かされます。
新たな技術者が来ても、ブロックチェーンを利用しているという感覚もなく、通常のWeb開発の感覚で運用者の参画・入れ替えが可能です。
実はこれがシステム・サービスを継続するうえで重要なことです。
NEM・Symbolで構築したサービスは運用リソース不足が発生しません。
つまり
参入コスト・廃棄コストが低く、運用コストも適正化が可能ということです。
パッケージ専門家やコンサルなど高額な単価のエンジニアを大量に投入することなく、今までの延長線で、ブロックチェーンアプリが開発可能なのです。
NEM・Symbolは従来の開発コストで、ブロックチェーン機能を組み込めます。
NEM・Symbolは適正価格で構築可能です
おわりに
ながながと記事がつづいたけど、結局、NEM・Symbolの本質的な価値ってなんなの?
サービス・システムに必要な3要素を備えているということじゃない?
3要素ってどういうこと?
モノ・人・金がそろっていること
なるほど、モノは開発のための基盤が整っていることだね
1.ブロックチェーンの有用な機能をビルドイン
2.REST-APIやCLIで既存の経験が最大に生かせる
3.SDKも充実
NEM・Symbolはブロックチェーンアプリの開発基盤ということだね。
そのうえ、世界中に事例があるのも安心ね
人は、ブロックチェーン開発基盤をフル活用することで、開発者・運用者が揃えやすいことかな
1.教育コストが低い
2.学習難度が低い
システム開発で教育費をお客さんからいただくのは難しいのよね
金は、開発基盤と人が揃うから、一番の開発原価といえる人件費が抑えられるということだね。
そうね、やはりサービス構築にはお金が必要。構築費用や運用費用が適切でないとクライアントからはGOサインは出ないのが現実ね。
世知辛いけど、企業システムや、皆に喜ばれるサービスの構築にはお金の問題はつき物だね。
結局お金の問題をクリアしやすいブロックチェーン基盤って何かな?というと、今のところNEM・Symbol プラットフォームが総合的にみて頭一つ突き抜けてるかなと思うわね。
お手軽に始められるというのは、現実的なサービス構築において1番の強みかもしれないね。
そうね、NEM・Symbol の本質的価値とは
企業システムやサービスを作るうえで、必要十分な機能が、一般エンジニアに手が届く形で提供されているブロックチェーン開発基盤であること
言い換えるなら・・・
ブロックチェーンアプリ開発を強力に支える可能性ある基盤であること
NEM・Symbolのキャッチフレーズは「Powering Possibility」
まさにブロックチェーン開発の「可能性の拡大」する基盤だね
ブロックチェーンの恩恵を受けたサービス構築の
「無限の可能性」を秘めた基盤ね
NEM・Symbolの本質的価値は、これから生まれるブロックチェーン技術の恩恵を受けた
ブロックチェーンアプリ(DApps)開発の道を拓いたこと
とサイト主は思うのです。
みなさんNEM・SymbolでDApps作成してみませんか?