はじめに
本稿は、NEMプロジェクトのファーストプラットフォームであるNIS1で実現された
公証機能である「アポスティーユ」
にまつわるプロジェクト群について、掘り下げる記事になります。
NEMプロジェクトは、2020年年末にかけて、次世代プラットフォームであるSymbolのローンチを控えています。
Symbolにおいてはさらに企業システムに貢献可能な様々なビルドイン機能を抱えるブロックチェーン技術を採用したシステムを構築するための基盤に進化しています。
しかしSymbolが登場しようとしている今でさえ、
前身であるNIS1プラットフォームは、いまだに魅力的なプラットフォーム
と言えます。
様々な機関の実証検証や調査を経て、その堅牢性は初期ブロックチェーン基盤の中でも最も評価される基盤の1つと言われ、稼働後からチェーンとしての堅牢性は保ちつづけています。
そしてNIS1上で様々なプロジェクトが展開されてきました。
その1つが、今回ご紹介する「アポスティーユ」です。
その先進性がゆえに、公開当初、その有用性を正しく評価する機会に恵まれませんでしたが、今のWithコロナ時代になって改めて見直されるべきソリューションといえるものです。
アポスティーユとは?
そもそも「アポスティーユ」って何のこと?
英語ですと「Apostille」と書きます。
外務省のサイト「公印確認・アポスティーユとは」を覗いてみましょう。
むっちゃ乱暴に要約すると、
外国での諸手続き(婚姻・離婚・出生,査証取得,会社設立,不動産購入など)に対して提示する日本の公文書に対しての、外務省のお墨付き
のこと。
アポスティーユは、その中でも、
ある国際条約の締結国家間で用いられる、簡易的な、お墨付き
を指すようです。
NEMプロジェクトにおけるアポスティーユ
一方、NEMプロジェクトにおけるアポスティーユとは、
デジタルデータの所有権につき“移転可能な”証明書をブロックチェーン上で発行できるツール
として公開されています。
インターネットを介したデジタルデータの頒布において、当然世界に向けて、その所有権を公証することができ、加えて移転までもを行うことが簡易的にできるということで、まさに「アポスティーユ」な基盤と言えます。
つまり、或るデジタルデータが、
- いつから存在し
- 誰によって承認され
- 誰が保有しているか
以上を、
第三者を介さずに、公証しうるサービスが「アポスティーユ」
です。
NEMの最初のプラットフォームである「NIS1」で、2016年に実現したプロジェクトであり、その先進性がうかがえます。
概要
開発したテックビューロ社の「アポスティーユ」の概要イメージを紹介します。
上記のように、NEM技術を用いたPrivateチェーン「mijin」の開発ベンダーでもあるテックビューロ社は、Publicチェーンの公証機能にアンカリングする形で、企業システムにおいて、プライバシーを保ちながら「アポスティーユ」を利用する方法を示唆しています。
機能
同じく、テックビューロ社の示した図をみてみましょう。
上記のように、デジタルデータの証明書の発行、証明書の譲渡、監査者による署名済みファイルの監査が概念的に示されています。
機能的には公証対象のデジタルデータファイルと署名タイミングのタイムスタンプをもって、ハッシュ値を求め、これをNIS1のチェーン上に刻み、これを用いて監査を行っているようです。
適用
アポスティーユの適用範囲は、以下のようなものが想定されていました。
- 土地やアート、写真、宝石、特許、音楽、自動車といったようなあらゆる所有権の登記。
- 議事録や契約書、メール、ツイート、音声記録、ログ、タイムカードなどのタイムスタンプ記録。
- 売り上げデータや会計データなど、後に監査が必要となる情報の記録。
実際には、テックビューロ社の提供したアポスティーユをそのまま使う形ではなく、同様なアーキテクチャにより、各ソリューションが提供された結果となりました。
とはいえ、2016年の時点で可能性を示したという役割は、非常に評価すべきものと思います。
利用方法
以下サイトを参照しましょう。画面を用いて細かく利用方法を説明してくれています。
系譜
アポスティーユは、テックビューロ社開発の「NanoWallet」の一機能として、「世界初となる、所有権が移転可能な証明書」として世に産みだされました。
2020年8月中旬現在、公式のSymbolWalletにはアポスティーユ機能はバンドルされてはいません。
しかしながら、その系譜はSymbolに確実に引き継がれています。
LuxTag社では、Symbolのビルドイン機能を用いることで、公証・追跡ソリューションをシンプルに構築しようとしています。
特に、マルチレイヤーマルチシグを使うことで、複数の人(管理者、所有者など)が秘密鍵をそれぞれ所有し、セキュアなやり方で所有権を受け渡すことが、第三者を介することなく可能になる事になるでしょう。
おわりに
サイト主がNEMプロジェクトを認知したのと、NanoWalletとの出会いはほぼ同時の2016年年末でした。
暗号通貨に触れ始めたころに、ブロックチェーン技術の特色でもある、非改ざん性と透明性を利用した、アポスティーユに出会えたのは幸運でもありました。
ブロックチェーン技術は、なんか怪しいビットコインなる暗号通貨を実現する基盤としか思っていなかった段階から、一気にソリューション提供の技術要素であると認識が改められました。
DAppsという言葉が紡がれる前に、「アポスティーユ」との出会いによって、次代の技術革新を予期したものです。
私の中でブロックチェーンがバズワードではなく、技術要素であると確信した思い出深い瞬間です。